走り込みトレーニングの最後の1本! ぐっと力を入れようとした瞬間にふくらはぎに「ピキッ」と痛みが走り、その場から動けなくなったことはありませんか? 立っていることもままならず、試合中であれば、その後の勝敗さえ左右することもある「こむら返り」は、一般的には「ふくらはぎがつる」ことを指します。
専門用語では「筋痙攣[きんけいれん[」と呼ばれ、自分の意志とは関係なく、筋肉の強い収縮が持続する現象です。酷使する部位によっても異なりますが、多くの場合は下半身、特にふくらはぎや足の指に多い症状です。

症状

筋肉には、「筋紡錘[きんぼうすい[」や「腱紡錘[けんぼうすい[」という、筋肉が正常に収縮するために働くセンサーが存在しています。このセンサーが何らかの理由で異常を起こし、筋肉が収縮したまま、緩まなくなった状態が筋痙攣だと考えられています。

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原因

発症のメカニズムは未だ完全には解明されていませんが、特に運動中に起こる筋痙攣は、体液中の水分と電解質のバランスが崩れることが原因であると言われています。電解質は、神経伝達や、筋肉を収縮させるのに重要な役割を果たしています。
発汗では水分とともに電解質も失われています。大量の汗をかいた状態で水だけを飲んでいると、体液が薄まってしまいます。電解質バランスが崩れることで、神経や筋肉が過敏になり、筋肉をコントロールできなくなってしまうのです。平常時は意識しなくても水分と電解質のバランスが保たれますが、運動時はバランスが崩れやすくなるため、意識して電解質を補給する必要があります。

※電解質とは?

電解質とは水に溶けると電気を通す物質のことです。人の体は約60〜65%を水分が占めていますが、その水分(体液)には電解質が含まれています。電解質は体の中で筋肉細胞や神経細胞の働きに関わり、私たちの活動を支えています。主な電解質とその役割を下の表にまとめました。これらは生体にとって欠かせない物質であり、5大栄養素としてあげられる「ミネラル」に属します。
電解質は多すぎても少なすぎても正常に働くことができません。

カルシウム(Ca) 筋肉の収縮、神経の伝達など
マグネシウム(Mg) カルシウム量の調整、筋肉の収縮など
ナトリウム(Na) 身体の水分量・浸透圧の調整、筋肉の収縮、神経の伝達など
カリウム(K) 筋肉の収縮、神経の伝達など

対処

筋痙攣になってしまったら、反動をつけず、ゆっくりとストレッチを行いましょう。筋痙攣では筋肉の微細な損傷を伴うため、勢いよく伸ばしてしまうと肉離れを起こす可能性があります。痙攣がおさまったら心臓に向かってさするようにマッサージを行い、運動を終えた後は、筋痙攣の痛みを翌日に残さないために、アイシングを行いましょう。

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1人で行うストレッチ
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2人で行うストレッチ

予防

ミネラル摂取
日頃から食事でカルシウムやマグネシウムを多く含む食材を摂ることが大切です。カルシウムは、乳製品、骨ごと食べる魚、殻ごと食べるエビ、葉物などに多く含まれ、マグネシウムは、大豆製品、魚介、海藻などに多く含まれます。水分補給では、脱水状態になるのを防ぐためにミネラルを十分に含んだスポーツドリンクやバイオ茶などが適しています。

カルシウムやマグネシウムを摂取するのに適した食品の例

hijiki
ひじきの煮物
jako
桜えびとじゃこ入り納豆ご飯

血行循環促進
運動前は、ウォーミングアップをしっかりと行い、心身の準備をしましょう。クーリングダウンでは運動によって生じた疲労物質を除去するためにゆっくりとストレッチを行いましょう。ぎゅっと硬くなり、縮んだ筋肉をトレーニング前の状態に戻すようにします。
ウォーミングアップが不足し、筋肉の柔軟性が十分に獲得されていないまま激しい運動を行ったときや、クーリングダウンが不十分で、運動後の疲労物質が体内に残っているときは、特に筋痙攣が起こりやすくなります。運動の前後にしっかりとストレッチを行い、血行循環を促進させましょう。

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運動前後に行う
ふくらはぎのストレッチ

イージーストレッチを足裏のつま先側に引っかけ、仰向けになります。膝を伸ばした状態で、ゆっくりと引っ張りながら、ふくらはぎを伸ばします。

テーピング
普段から筋痙攣になりやすい人は、ウォーミングアップ前につりやすいところにテーピングをしましょう。筋痙攣が起きてしまってからではほとんど効果がありません。予防として、運動前に筋肉に沿って貼るようにします。テーピング講座で貼り方を紹介しています。