トレーニング計画の中で、トレーニングの頻度が増す「準備期」や、強度が高くなる「試合前期」は、特に疲労がたまりやすくなります。基礎体力を向上させるためには、疲労を効率よく取り除き、さらに負荷の高いトレーニングに取り組めるように体をケアする必要があります。
また、オーバートレーニングやオーバーユース症候群が起こる可能性も出てきます。過去のケガの履歴を考慮し、トレーニングの強度や時間が過剰ではないか見極めながら、しっかりと疲労回復を行いましょう。

疲労回復の方法

疲労回復には以下のような方法があります。

1.アクティブリカバリー
2.身体的ストレスと精神的ストレスの解消
3.質の高い睡眠(集中した睡眠時間や昼寝など)
4.栄養と水分の補給
5.サプリメントの摂取
6.冷却療法(アイスバス、アイスパックなど)
7.温熱療法(ホットバス、ホットパックなど)
8.マッサージ

ここでは、アクティブリカバリーと冷却療法の必要性と方法を詳しく取り上げます。

アクティブリカバリー

完全休養ではなく、軽く運動をすることで回復を促す方法を「アクティブリカバリー」といいます。血液の循環を促進させることで、体内に停滞した疲労物質を取り除き、回復につながります。気持ちいいと感じる程度の軽い有酸素運動とストレッチを30〜40分行うとよいでしょう。
ただし、種目や年齢、競技レベル、トレーニング負荷などによって、疲労度は異なり、すべての場合において、この方法が適しているわけではありません。体を動かせないほど疲労度が高いときは、まずは回復するための栄養をきちんと摂り、完全休養しましょう。運動できるぐらいの回復を感じるようになってから、軽い運動を開始して血流を高め、アクティブリカバリーに移ると効果的です。

冷却療法(アイシング)

アイシングは、繰り返し体を動かすことで発生した炎症の早期回復に非常に有効です。患部を冷却すると、一時的に血管が収縮します。アイシングを終えると、今まで収縮していた血管が拡張し、細胞組織に多量の血液が流れることで、疲労の原因となる乳酸や老廃物が除去され、結果として疲労回復が早まります。
また、コンタクトスポーツで起こる衝突による外傷の処置としても必要となります。患部に起こる内出血を最小限に抑え、損傷の拡大を防ぐことで、回復が早くなります。また、麻酔効果により痛みを軽減させ、筋の興奮を抑制して緊張を軽減させる効果もあります。

アイスバス(冷水浴)
冷やしたい部位が浸かる程度の水を入れ、水温を13〜15˚Cに調整し、10〜15分入ります。大きめのポリバケツをバスタブとして利用することで、場所を選ばずに、練習後すぐに入ることができます。
2時間以上のランニングや90分以上の激しい運動など、強度の高いトレーニングの後に効果的です。また、気温が高い夏季であれば、運動によって上昇した体温を下げるのにも効果的です。冷水浴を行うことで精神的にも落ち着くことができます。
icebath
アイスバッグ
氷のうやビニール袋に氷を入れたアイスバッグを10〜15分間患部に当てます。1回のアイシングで痛みが軽減しない場合は、20〜30分間隔をおいて、2〜3度行ってください。長い時間アイシングをしてしまい、凍傷を起こさないように皮膚の色と状態を確認しながら行いましょう。
icebag
アイスマッサージ
紙コップに水を入れて冷凍庫で凍らせたものを使用して、疲労した部位や痛みのある部位に当て、こすりながらマッサージを行います。氷が溶けた分だけ周りの紙を剥がしながら使用できるため、手が冷たくなりません。また、短時間で患部が冷えることも利点です。
icemassage

ここで紹介した疲労回復は、トレーニングの強度が高いときや、時間が長いときに効果があります。試合直前の調整や軽度のトレーニング後においては必ずしも必要ではありません。常に体の状態を考慮して効果的な疲労回復を行いましょう。
〈参考書籍〉「リカバリー(SAGE ROUNTREE著 山本利春 監訳)」

アイスバッグの作り方

氷のうが手元に無いとき、ビニール袋のアイスバッグは手軽に作ることができ、冷却したい患部の形状や範囲によって大きさや形を調整することができます。ここでは簡単にできるアイスバッグの作り方を紹介します。
アイシングで使う氷は冷たければ冷たいほど良いというわけではありません。家庭用冷蔵庫で作られた氷は0˚C以下ととても冷たく、霜が降っている氷は短時間でも凍傷になる可能性があるめ、一度水にさらして使用しましょう。

icebag1
icebag2

①患部が十分に冷却できるくらいの氷を袋に入れます。
アイスバッグディスポは、使い捨てタイプの厚手のポリエチレン製アイスバッグです。
②氷を平らに並べ、崩さないようにビニール袋の空気を吸い出します。空気が入って、氷の間に隙間ができると氷が溶けやすくなります。
・氷のうを使う場合も同様に、中の空気をしっかり抜きましょう。
③空気が入り込まないように袋の口を結びます。アイスバックを患部に当て、バンテージやラップで固定します。
・凍傷を起こさないように皮膚の色と状態を確認しながら行いましょう。
・氷と皮膚の間に濡れたタオルを挟むことで凍傷を防ぐことができます。