「捻挫」という言葉はスポーツ現場でよく聞きますが、そもそも捻挫とはどういうケガなのでしょうか。捻挫とは、関節を捻ることで起こるケガ全般を指します。関節を捻ることにより、靭帯が切れたり伸びて損傷したり、クッションの役割をしている膝半月板が切れてしまうことがあります。
捻挫はどの関節にも起こりうるケガで、整形外科を受診した際には、損傷(切れたり伸びたりしている)した靭帯・半月板を示すために、「前距腓靭帯損傷ぜんきょひじんたいそんしょう」「内側側副靭帯損傷ないそくそくふくじんたいそんしょう」「内側半月板損傷」など難しい名前で呼ばれます。
「ぎっくり腰」や「突き指」といったケガの名前は皆さんもよく聞くのではないでしょうか。これらのケガも「捻挫」に含まれ、ぎっくり腰は腰椎捻挫、突き指は手指の靭帯損傷のことなのです。
今回は捻挫の中でも一番頻度の高い「足関節捻挫」について説明します。

足関節捻挫とは

足関節捻挫とは、足関節を捻ってしまい、本来の可動域を超えて、足関節周囲の靭帯が損傷することをいいます。痛みや熱感、れなどが主な症状です。
足関節捻挫には内反捻挫※1と外反捻挫※2の2種類がありますが、多くを占めるのは内反捻挫です。
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※1 内反捻挫 足関節が内がえし(足裏が内側を向く動き)することによって起こる捻挫
※2 外反捻挫 足関節が外がえし(足裏が外側を向く動き)することによって起こる捻挫

足関節の機能解剖

足関節捻挫の正しいケアやリハビリをするためには、足関節周囲の構造や関節の動きを知る必要があります。内反捻挫が多い理由とあわせて、骨や靭帯、筋肉の構造を理解しましょう。


「くるぶし」は内側と外側では高さが異なります。内果ないか(内くるぶし)と外果がいか(外くるぶし)では、外果のほうが低い(地面に近い)位置にあります。
外がえしをしようとすると、外果が邪魔になりあまり動くことができませんが、内がえしは内果の下が空洞になっているため、距骨が動きやすい構造になっています。これが、内反捻挫をしやすい理由の1つ目です。

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靭帯
靭帯は骨と骨をつなぎ、関節が本来の可動域以上に動くのを防いだり、骨同士がズレるのを防ぐ役割をしています。筋肉や腱と違い、伸びにくく硬い強靭な組織です。
足関節の外側には前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯があります。内反捻挫で特に損傷しやすいのは、前距腓靭帯と踵腓靭帯です。また、内側には三角靭帯という強固な靭帯がついています。内側の強固な三角靭帯に比べると、外側の靭帯の強度は弱く、これが内反捻挫が多い理由の2つ目です。

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筋肉、足関節の動き
足部から下腿(ふくらはぎ部分)にかけてついている筋肉を紹介します。
これらの筋肉が収縮することで、足関節は自由自在に動きます。

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これらのことから分かるように、人間の足関節は内がえししやすい構造になっています。その上、内側の靭帯に比べ外側の靭帯の方が弱いため、内反捻挫が多くみられるのです。次回は足関節捻挫をしてからの応急処置、復帰までのリハビリテーションを解説します。


参考文献 
・財団法人日本体育協会「アスレティックトレーナーテキストⅠ」
・財団法人日本体育協会「アスレティックトレーナーテキスト3
・スポーツ外傷・障害の基礎知識」
・医道の日本社「身体運動の機能解剖」
・ナツメ社「オールカラー 骨・関節・筋肉の構造と動作のしくみ」