スポーツの基本動作には膝の働きが欠かせません。同時に、膝は障害を起こしやすい部位でもあり、かつ重症になりやすい傾向があります。今回は、膝の使い過ぎにより多く起こる障害について、起こる部位と要因、症状に応じてのケアを説明します。
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ランナー膝1 腸脛靭帯炎ちょうけいじんたいえん

ランナー膝は、ランニングが原因で起こるスポーツ障害のことで、特に多いのが「腸脛靭帯炎」です。大腿部外側にある大腿筋膜張筋だいたいきんまくちょうきんから腸脛靭帯に変わる部分に炎症が起こり、ランニング時に膝の外側に痛みが起こります。
腸脛靭帯は、大腿骨の外側に位置し、膝を伸ばした時は大腿骨の前方に、曲げた時は後方に移動します。この移動の際に大腿骨外側上顆だいたいこつそとがわじょうかという骨のでっぱり部分を腸脛靭帯が滑るように動きますが、大腿筋膜張筋の張りが大きいまま、膝の曲げ伸ばしの回数が増えるほど炎症が起こりやすくなります。
陸上競技の長距離選手に多く見られ、市民ランナーなどで症状を訴えるケースが多くなっています。特にO脚の人や、足の外側で体重を受けるクセのある人、膝関節の変形が進んで膝が不安定な人など、体重による負荷が身体の外側にかかるケースで発症しやすくなります。

ランナー膝2 鵞足炎がそくえん

膝関節内に集まっている筋肉の付着部に炎症が起こる障害のことを言います。運動している時や膝の曲げ伸ばしをした時、患部を指で押した時、さらには、太もも裏の筋肉「ハムストリングス」の内側を伸ばすストレッチングをした時などに、膝の内側から膝下にかけて痛みます。特に、膝をいっぱいにまで伸ばした時に痛みが起こりやすいことや、階段の昇り降りに支障をきたすことが多いのが特徴です。
膝の曲げ伸ばしをする時に膝が内側に入る動作(外反)や、膝から下を外側にひねる動作(外旋)をしたときに鵞足部の腱と骨、または腱同士が擦れます。特に、走りながら方向転換をする時にこうした動作が行われるので、ランニングで足を後ろに蹴り出す時やサッカーボールを蹴る時、急な方向転換を行った時などに特に負担がかかり、これらの動作を繰り返すと発症しやすくなります。
方向転換を伴わないランニングでも、急に長距離を走った時などに起こりやすく、また、膝の位置が悪いX脚(内股)があると、足関節の外反動作と膝関節の外旋動作が繰り返されるため発症リスクが高まります。水泳の平泳ぎのキックでも同様の運動が行われるため、平泳ぎは鵞足炎を起こす典型的な動作と言われています。

ジャンパー膝

ジャンプ時に膝に大きな負荷がかかることで膝蓋腱しつがいけんが損傷し、炎症を起こしたものを膝蓋腱炎しつがいけんえんと言います。体重などの大きな負荷を伴う膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで生じやすくなります。
ジャンプをする時、膝の曲げ伸ばしに伴い、太ももの表側の筋肉が収縮し、膝蓋腱が強い力で引っぱられたり伸ばされたりします。これが繰り返されると、膝蓋腱に小さな断裂などの損傷が生じて炎症を起こします。ランニングで発症するのは、ジャンプと着地を繰り返しているためと考えられています。
ジャンパー膝は、膝の使い過ぎ(オーバーユース)によって起きるスポーツ障害の一つで、ジャンプをする跳躍競技や、ボールを蹴るようなキック動作、ダッシュを頻繁に行うスポーツで多く発症します。また、練習やトレーニングでランニングをたくさん行う競技で多く起こります。

ランナー膝・ジャンパー膝のケア
軽症の場合は、膝を使う運動を控えてケアをしながら安静を保つことで炎症が治まり、数週間で自然と治ります。
痛みが強い場合は、安静を保ちつつアイシングを繰り返し行ったり、炎症がなければ、シップなどの消炎鎮痛剤を使っても良いでしょう。痛みが治まってきたら痛みに関わる筋肉のストレッチングやマッサージをして筋肉をほぐすのも効果的です。
急に痛みが発生した「急性」の場合は、患部のアイシングを中心に応急(RICE)処置を行います。症状が長く続いて慢性化している場合は、患部を冷やしたり温めたりの温冷交代浴も適用しながら積極的に動かして血行を促進するのが効果的です。
膝関節のストレッチングや膝周辺の筋力トレーニングを行い、筋肉の柔軟性と筋力アップを図ります。

オスグット・シュラッター病

この障害は、膝の皿の下あたりに位置する骨に、変形や膨張などの異常が起き、刺激に対して異常に敏感になるものです。膝の関節から下の「すね」の中心には脛骨という太い骨があり、その膝関節近くに脛骨粗面という盛り上がった部分があります。ここは12歳前後に発達しますが、その過程で異常が生じることがあり、子供の成長に伴ってよく見られる成長痛の一つです。
原因として、子供の骨は成長の過程で柔らかい骨から硬い骨へと変わっていきますが、その間の骨はやや不安定な状態であり、運動などの刺激によって異常が生じるものと考えられています。こうした不安定な状態は、骨の成長スピードに膝周辺の筋肉や腱の成長が追いつかず、アンバランスな筋骨格構造になることが主な要因です。こうした状態に過剰な運動による負荷が加わることで症状が現れます。
この病気は成長期にある10〜15歳くらいの小・中学生、特にスポーツをする少年少女によく見られるスポーツ障害で、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど跳躍競技に多く見られる傾向があります。

オスグット・シュラッター病のケア
成長に伴って骨と筋肉・腱のバランスも整い、異常のある骨も硬くしっかりしてくるため、痛みも徐々に消えていきます。ほとんどの場合、積極的な治療を施すことはなく、半年〜1年くらいで自然に治癒します。ただし、患部のふくらみはそのまま残ることが多いようです。普段の痛みを抑える方法としては、炎症があるようであればアイシング、無ければ患部を温める温熱療法や、股関節・膝関節の動きに関連する筋群の柔軟性を高めるストレッチングなどが効果的です。また、大腿部の筋肉が疲労して膝への負担が大きくなっている場合もあるので、その筋肉をほぐすマッサージやストレッチングも効果的です。