陸上競技スプリント種目のスタートや野球の盗塁、サッカーやバスケットボールでディフェンスを振り切るための一瞬の動きなど、あらゆるスポーツにおいて素早い反応と爆発的な動き出しは勝敗を決める重要な要素です。
判断と反応の速さ、そして動き出しのスピードは、SAQトレーニングにおける「クイックネス」に分類されます。今回はこのクイックネスを高めるポイントやトレーニングをご紹介します。

クイックネスとは

クイックネスとは、「刺激に反応して速く動き出す能力」と定義され、目や耳から受けた情報に反応して素早く動き出す能力のことを指します。スポーツでは、静止した状態からの「スタート動作」や、急激な方向転換やストップ動作が求められる局面での「素早い反応と動作」など、一瞬の判断と反応が必要な場面でクイックネスの能力が求められます。
また、スポーツによっては、前方だけではなく様々な方向(マルチディレクション)への素早い移動が求められるため、一方向のみではなく、あらゆる方向への効率的なスタート動作を身につける必要があります。

クイックネスを構成する要因

クイックネスの能力は、刺激に反応する「リアクションタイム」と、速く動き出す「ムーブメントタイム」の大きく2つの要素から構成されます。

リアクションタイム:
反応時間のことで、刺激を受けて反応するまでの時間を指します。陸上競技のスプリント種目などでピストルの音が鳴って動き出すまでの時間や、サッカーのゴールキーパーが、相手が蹴ったボールの方向を判断して動作に移るまでの時間がリアクションタイムです。スポーツにおいて刺激の大半は視覚または聴覚から入ってきます。

ムーブメントタイム:
速く動き出す能力のことで、刺激に対して反応した後の動きの速さやスムーズさのことを指します。スムーズな動き出しを達成するためには、「パワーポジション」の獲得が重要です。また、パワーポジションからマルチディレクションへの合理的な動き出し動作の獲得を目指す必要があります。

※パワーポジションとは
動き出しやすい姿勢や力を発揮しやすい姿勢のことを「パワーポジション」と言います。膝が軽く曲がり、腰が落ち、背筋がまっすぐで上体はリラックスしていることが基本的な姿勢になりますが、それぞれの競技やポジションによってパワーポジションの姿勢は異なります。
以前は、パワーポジション=「安定した姿勢」と言われていましたが、安定というとどっしりとしたイメージになってしまうため、「動き出すための姿勢」と解釈をしたほうが良いでしょう。

クイックネストレーニング実践

クイックネストレーニングは、刺激に反応して動き出すという一連の流れを重視しているため、様々な刺激を取り入れ、動きだけでなく、反応や判断の正確性も視野に入れてトレーニングを行います。
クイックネス能力を高めるためには、「正しい動作の獲得」と「獲得した動作パターンの発揮」がポイントです。まずは競技を分析し、どのような刺激に反応することが多いのか、また反応後の動き出す方向や動き方など、それぞれの競技やポジションでどのような動きが求められるのかを理解しましょう。そして、パワーポジションの獲得やマルチディレクションへのスタート動作、また、爆発的に動き出すための速筋繊維の動員や股関節周辺の筋群の同調など、リアクションタイムとムーブメントタイムの両方を改善するようトレーニングを行いましょう。


①②リアクショントレーニング
視覚刺激や聴覚刺激に反応するトレーニングです。

①ジャンプ&しゃがむ

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②8方向フットワーク

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③プログラム リアクショントレーニング
刺激に反応してあらかじめ決められた方向へ決められた動きを行うトレーニングのことを指します。つまり、プログラムされた動きを刺激に反応して行うことです。ボールドロップのトレーニングを例に挙げると、動作としては前方に移動するというプログラムされた動きですが、動き始めはボールという視覚刺激に反応して動き出します。

③ボールドロップ

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④プログラム ランダム リアクショントレーニング
前述したプログラムリアクショントレーニングのように、プログラムされた動きを刺激に反応して行いますが、動く方向を、前か後ろ、右か左のようにランダムに行うトレーニングです。

④3方向スタート

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⑤⑥ランダム リアクショントレーニング
刺激に反応した後の動く方向がランダムになります。クレイジーボールを使ったトレーニングや鬼ごっこなどのゲーム性の高いトレーニングは、ランダムリアクショントレーニングに位置付けられます。

⑤ツーバウンドキャッチ

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⑥ワンバウンドキャッチ

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