今回は成長期に多く起こりやすいスポーツ障害である「オスグッド・シュラッター病(以下オスグッド)」について説明します。「成長痛だからしょうがない」といって放置していませんか。痛みが起こるしくみを理解し、早い段階で改善できることがないか考えてみましょう。オスグッドについては、ディスパッチVol.118 2017年2月号「膝に起こるスポーツ障害」でも簡単に掲載しています。

症状の特徴

オスグッドは、成長期の中学生や高校生に多く、特にサッカーやバスケットボールなどランニングやジャンプ動作を多く行うスポーツで発症しやすいとされている膝の痛みです。
痛みが発生する場所は、膝のお皿(膝蓋骨)がある下の部分から脛の付着部位である「脛骨粗面けいこつそめん」という盛り上がった部分にかけての比較的狭いエリアが中心です。
休憩時など、運動を止めると痛みはなく、運動をすると痛みが出現するという特徴があります。

痛みが起こるしくみ

大腿四頭筋から伸びている膝蓋靭帯は脛骨粗面に付着しており、大腿四頭筋が収縮し、脛骨粗面を引っ張ることで、膝を伸ばす動作を行っています。繰り返し脛骨粗面が引っ張られ、ストレスがかかることで、骨が徐々に隆起し、剥離してしまうのが、オスグッドが起こるメカニズムです。
成長期においては、骨が成長過程にあり、柔らかい骨から硬い骨へと変わっていきます。まだ固まっていない成長過程にある柔らかい軟骨が引っ張る力に耐えられず、負けてしまうのです。
また、身体の発達が著しくみられるこの時期は、骨がどんどん成長し、このスピードに膝周辺の筋肉や腱の成長が追いつかず、アンバランスな筋骨格構造になります。こうした状態に過剰な運動による負荷が加わることで症状が現れやすくなります。

成長期を終えると骨の成長もほとんどなくなるため、症状は出なくなります。ただし大人になっても、身体を酷使するなどにより再び脛骨粗面に強い力が加わると再発することがあります。これをオスグッド後遺症と呼びます。

原因

一つには柔軟性の問題があります。身体が硬かったり、準備運動などで十分にほぐされていない状態で急にスポーツを行うと、筋肉の緊張状態が続き、膝に大きな負担がかかってしまいます。
また、スポーツを行った後のストレッチ不足も原因の一つであり、疲労が蓄積され、膝に負担を与えてしまう場合もあります。
特に大腿四頭筋の柔軟性が低かったり、疲労が蓄積していると、筋肉が硬くなり、その分脛骨粗面にかかるストレスも大きくなります。
さらには姿勢が悪かったり、身体のバランスが崩れている場合なども、膝への負担が増して発症の原因となります。

予防法と治療法

オスグッドを予防するためには、トレーニング前の準備運動や、終わった後の筋肉の緊張をほぐすストレッチを充分に行うことが重要です。これにより、膝への負担を軽減させることができます。大腿四頭筋のストレッチやセルフマッサージ、トレーニング後のアイシング(アイスマッサージもしくはアイスバッグ)が効果的です。
また、柔軟性を高めることで、脛骨粗面にかかる負担をある程度抑えることができますし、左右を均等に使えるよう、身体のバランスを整えることも大切です。
オスグッドは、身体の成長上、やむを得ない症状だと思われることがあるため、痛くても休まないケースが多いといわれています。慢性化や後遺症を防ぐためにも無理はせず、痛みが治まるまでは安静にして、トレーニングは患部外のみにして症状が悪化しないようにしましょう。
痛みがなくなったら、トレーニングを再開しますが、長い回復期間がかかった場合は、柔軟性、筋力、ランニングやジャンプの筋パワーを充分に回復させ、競技動作が問題なくできるようになってから練習に参加しましょう。ただし、最初の段階では痛みが再発しやすいため、トレーニング時にはサポーターやテーピングを使用して負担を軽減しましょう。
軽度の症状の場合はサポーターを使用して膝蓋骨と脛骨粗面の間の負担を軽減させるサポートをしたり(写真1)、もしくはテーピングを使用して大腿四頭筋のサポートを行い(写真2)、膝蓋靭帯が脛骨粗面で引っ張られてストレスがかからないようにします。
痛みが強い時や炎症が見られる場合には、医師の指示のもと、鎮痛剤などの内服や鎮痛消炎剤の塗布を行います。

最近は子どもたちが普段の生活の中で正座をする機会が少なくなっていますが、礼儀作法として正座を行う機会の多い武道をする子どもには、オスグッドが少ない傾向にあるそうです。このことから、予防法の一つとして、正座は膝周辺の筋肉や靭帯のストレッチになり、オスグッドの予防に良いといった説もあります。ただし痛みがすでにある場合には無理に行わないようにしましょう。