先月号では足関節捻挫のメカニズムを紹介しました。今回はその応急処置とアスレティックリハビリテーション(以下、アスリハ)について解説します。

応急処置

応急処置の基本は「RICE処置」です。捻挫をした患部をきちんと確認し、氷を当てて固定・挙上します。今月のピックアップではRICE処置を詳しく紹介しています。
この時のポイントは、ホースシューパッドプロテクティブパッドを使用して、受傷部位に圧迫を加えることです。捻挫をした方向と逆方向にダブルレンジラップで制限し、しっかりと固定します。
捻挫の症状を助長させないためにも、内反捻挫の場合には足背部から足裏を通り、小指側(中足骨骨頭部)から引っ張るようにしましょう。充分なRICE処置ができない状況であっても、全く行わないのではなく、できることをできる限り行いましょう。

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なぜRICE処置が必要か

捻挫が起こった時に損傷部位にある血管が一時的に収縮し、その後拡張が起こります。損傷が大きいほど、その割合が大きく、痛み、腫れ、内出血、発赤、熱感などの症状が現れてきます。これを「急性炎症」といいます。
急性炎症になると、血管から周囲の健康な組織へ炎症が拡がってしまい、損傷が悪化することがあるため、これを最小限に止めるためには的確な応急処置が必要です。RICE処置を受傷直後に適切に行うことで、ケガの回復と競技への復帰を早めることができます。

アスレティックリハビリテーション

病院でのメディカルリハビリテーションを経て日常生活に戻り(日常復帰)、チームに合流する手前(競技復帰)までのリハビリテーションのことを「アスリハ」といいます。
足関節捻挫は多くのスポーツで起こりやすいケガですが、軽度の痛みであれば継続してプレーできたり、チーム事情によりやむを得ずテーピングなどでサポートし、プレーしてしまうこともあるかもしれません。その結果、後遺症となって痛みが残ったり、患部をかばって別の部位のケガを誘発してしまう恐れが出てきてしまうのです。

アスリハをきちんと行うことは再発予防になると同時に、ケガを起こす前よりも高いパフォーマンスにするためのトレーニングにもなります。ケガと向き合い、自分のこころと身体を成長させるチャンスだと思って、医師やトレーナーに相談しながら行いましょう。

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足関節捻挫におけるアスリハの流れと目標

足関節を捻挫してしまった場合のアスリハを4段階に期分けして説明していきます。それぞれの段階において、何を目標として行うのかを明確にし、リハビリテーションに取り組みましょう。

1. 保護期 :腫脹しゅちょうの除去、可動域改善
2. 訓練前期:可動域改善、筋力アップ
3. 訓練後期:運動協調性改善、巧緻性こうちせい改善、筋力アップ
4. 復帰期 :スピードアップ、瞬発力アップ、種目別シミュレーション

1.保護期

RICE処置を行って炎症がおさまっても、残った腫れを取ることが重要です。この期間では、アイシングと運動を組み合せる「クライオキネティックス」も有効です。アイシングをして感覚が麻痺し、痛みを感じにくい状態で、タオルストレッチや体重をかけずに底背屈運動、サークル運動、足趾そくし運動を行います。炎症反応や痛みを軽減させるために、トレーニング後は必ず一度アイシングを12分〜15分行い、痛みが出ないように下腿中心のストレッチを行いましょう。

athreha4タオルストレッチ
athreha5底背屈運動
athreha6サークル運動
athreha7足趾運動

来月号では、訓練前期、訓練後期、復帰期のアスリハを紹介します。


参考文献
「アスレティックトレーナーテキストⅠ」財団法人日本体育協会
「実践すぐに役立つアスレティックリハビリテーションマニュアル」全日本病院出版会
「スポーツアイシング」大修館書店
「リハナビ」株式会社クレーマージャパン