最近、「インナーマッスル」というものの存在が広く知られるようになりました。様々なメディアでインナーマッスルを鍛える方法が解説されていたり、野球選手が筋力トレーニングを行う際に、「肩関節のインナーを鍛えよう」と言っている場面をよく耳にします。
それでは、「アウターマッスル」とは何が違い、どちらを鍛えればよいのでしょうか。今回はこの2つについて、詳しく説明しましょう。

アウターマッスルは「表層筋」のこと

三角筋や大胸筋など、目でしっかりと確認することのできる身体の表面に近い部分に存在する筋肉です。そのほとんどが、意識を筋肉に向けることによって簡単に動かすことができる「随意筋ずいいきん」で、意識的にトレーニングしやすいのも特徴です。
身体を動かす時に大きな力を発揮したり、関節を動かしたり、骨を守る重要な役割を持っています。トレーニングマシンやダンベルなどを使って行われる負荷の高いウエイトトレーニングは、アウターマッスルを中心に鍛えていると言えるでしょう。

インナーマッスルは「深層筋」のこと

表層ではなく、深層部にある筋肉です。ただしインナーマッスルというのは、どこか一つの筋肉を指している言葉ではなく、簡単に言うと身体の奥のほうにある筋肉の総称と思ってください。
インナーマッスルの多くは体積が小さく、関節の構造を補強する靭帯のような役割をして持続的に働いています。発揮する力は弱く、起こせる運動も小さいですが、関節の動きを細かく微修正して、姿勢を保持したり、バランスをとる役割があり、人間のさまざまな動きに密接な関わりを持っています。
インナーマッスルは「姿勢保持筋」とも呼ばれ、姿勢を正すためには必要不可欠な筋肉なので、トレーニングすることで、身体の動きを滑らかにし、正確なフォームを確立することができます。また、関節をしっかりと固定する役目があり、関節痛などの身体の痛みを解消する働きがあると言われています。そのため、手術後はまずインナーマッスルのトレーニングを行うことが重要です。
ウエイトトレーニングでインナーマッスルを鍛える場合は、「低負荷・高回数」で行うことで強化できると言われています。股関節や肩関節を捻るストレッチや負荷の軽いダンベル、チューブなどを利用するのも効果的です。
効果が目に見えて分かってくるアウターマッスルのトレーニングとは違い、インナーマッスルの場合は目に見えません。そのため継続してトレーニングを行うことを怠ってしまいがちです。地味にも見えますが、その効果やメリットの大きさから最近注目を浴びている筋肉です。

体幹とは?

体幹とは、手足や頭をのぞいた身体の胴体部分を指します。体幹の筋力を鍛えることで、身体の軸を安定させ、大きな力を発揮できるようになり、パフォーマンス向上につながります。
もしかすると、「体幹=インナーマッスル」と間違ってイメージしている方も少なくないかもしれません。体幹は場所の概念で、インナーマッスルは深さの概念であり、イコールの存在ではありません。体幹には、胴体のインナーマッスルもアウターマッスルも含まれるのです。

どちらを鍛えればよいのか?

それでは、インナーマッスルとアウターマッスルのどちらを鍛えればよいのでしょうか? 運動選手が鍛える場合、両方をバランスよく強化しなければなりません。しかし、しっかりと理解をしておらず、インナーマッスルしか強化しない人が多くいます。もともと身体全体の筋力が弱い人がインナーマッスルだけを鍛えても、根本的な原因は解決されず、効果は期待できません。
また、アウターマッスルを強化していけば、インナーマッスルもその動作を補助するために動くので、ある程度鍛えられていきます。最終的には自分が理想としている身体や目的によってトレーニングを行っていくことがよいでしょう。
筋肉の特性を見ると、筋力をつけたいならば、アウターマッスルのトレーニングを優先的に考え、ある程度筋力が備わっている上で、バランスを向上させたり、関節の安定性を高めることが目的ならば、インナーマッスルを鍛えることが有効となります。

アウターマッスル(表層筋) インナーマッスル(深層筋)
役割の違い 大きな動力、関節を動かす、骨を守る 姿勢の保持、バランスをとる、関節の固定
筋肉の種類 三角筋、大胸筋など 棘上筋きょくじょうきん、肩甲下筋など
動きの特徴 直線的な動きが主である 様々な動きに対応する
力の発揮の特徴 瞬発力が高い 持久力が高い
筋肉のコントロール能力 力の発揮は大きいが、細かい動きには対応しにくい 力の発揮は小さいが、細かい動きに対応できる
バランス能力 バランス能力は低く、突発的な動きに対応しにくい バランス能力は高く、突発的な動きに対応できる
トレーニング方法 筋肉を収縮させて鍛える
(ウエイトトレーニング等)
自重でトレーニングできるため、関節、筋肉に負担がかからない(ヨガやピラティス等)
また軽度の負荷(ダンベルやチューブ)でのトレーニング