ジメジメした気候も少しずつ落ち着いてきて、スポーツの秋にぴったりの気候になりました。そして、秋のシーズンを過ぎるとすぐに冬期トレーニングのシーズンがやってきます。
トレーニングの大きな目的の一つに、体の適応が挙げられます。体はトレーニングによって与えられた刺激に反応して、その刺激に見合った適応を示します(特異性の原則)。

今回のトレーニングのテーマは「変化」です。常に同じ刺激を体に与えるのではなく、トレーニング環境やトレーニング内容に変化を持たせて充実した練習を行いましょう。

目次
変化その1.坂道(傾斜)を使ったトレーニング
変化その2.砂地を使ったトレーニング
変化その3.専門種目以外のスポーツをやってみる

変化その1.坂道(傾斜)を使ったトレーニング

ハードなイメージがある坂道を使ったトレーニングですが、きちんと目的を理解しポイントを押さえてトレーニングをすることで、筋力・心肺機能の向上だけでなく、効率的なランニングフォームの獲得に繋がります。ただがむしゃらに坂を走ることがこのトレーニングのポイントではなく、正しい動きを意識して行うことや、平地での走りに繋がるように取り組むことで大きな効果を得ることができます。

●良い坂の選び方

角度がきつすぎて、すぐに前ももに強い張りを感じたり、フォームが意識できないと逆効果になります。一般的には3〜7度の傾斜が適切と言われています。走ってみて流し程度の力で登れる角度がちょうど良い坂の選び方です。

●どれくらいの強度でやるか

どのような目的でトレーニングを行うかによって、スピードや本数・距離は異なります。例えば、自分の全力疾走に近い80%〜90%のスピードだと、1本1本をしっかりと出し切ってトレーニングを行うことで、耐乳酸性や筋パワーの向上に繋がります。40%〜60%の中程度で行う場合には、動きのポイントをしっかりと意識し、正しい動きを体に身につけるようにすると良いでしょう。

●坂道トレーニングの頻度

トレーニングの目的や体力レベルにもよりますが、冬期や強化期間であれば週に1〜2回が適切です。いずれにせよ、疲労を溜め込んだ状態で行うのではなく、体がフレッシュな状態で行うことが望ましいでしょう。

動きのポイント


地面に対して前傾姿勢をとり、一歩一歩の接地時にしっかりと重心が乗り込むように意識をする。地面をしっかりと捉え、足が後方に流れないように意識して進んでいく。

脚の速い回転を意識し、ブレーキをかける動きにならないように注意する。緩やかな傾斜を選び、下り坂から平地につながるような場所で行うことが望ましい。

変化その2.砂地を使ったトレーニング

砂場や砂浜を利用し、地面から反発がもらえない不安定な状況でのトレーニングです。体を速く動かしにくい環境でトレーニングをすることで、全身の細かな筋肉まで意識して使い、バランス感覚を調整する効果が期待できます。
砂地がない場合は、アジリティディスクを使ったバランストレーニングやBボールを使った体幹トレーニングなど、不安定な状態を作ってトレーニングすることも有効です。

●どんなトレーニングが効果的か?

ダイナミックフレキシビリティやラダートレーニング

砂地を使うトレーニングの利点として、不整地でトレーニングを行うことによる「バランス能力の向上」が挙げられます。ダイナミックフレキシビリティやラダートレーニングなどを行うことで、より姿勢やボディバランスの意識がしやすくなります。

ダッシュやジャンプなどのトレーニング

砂地を使うもう一つの利点は、地面からの反発をもらえないことから、「股関節周りの筋群をより多く使って大きな力を発揮しようとする効果」が得られることです。

トレーニング例)
ショートスプリント・ロングスプリント・スラローム走

坂や不整地でのトレーニング後は、整地された場所での走りや動きの確認ができるとさらに効果的です。

変化その3.専門種目以外のスポーツをやってみる

「スポーツを上達するためにはひたすらそのスポーツをやり続ければ良い」と思っていませんか? 実はスポーツの上達やケガの予防のヒントは、自分の専門種目以外のトレーニングから見つけ出すこともできるのです。

●なぜ、いろいろなスポーツを行うと良いのか?

1. アクティブレストとしての効果

休養の種類には、体を使わずに完全に休息する消極的休養(ネガティブレスト)と、軽く体を動かし血流を良くして疲労を回復する積極的休養(アクティブレスト)の大きく2種類があります。1週間のトレーニングの中で1〜2日は休養日を設け、そのうちの1日をアクティブレストと位置付けて心身ともにリフレッシュをしましょう。

2.普段使わない筋肉に刺激を入れる

多くのスポーツは左右非対称の動きが多く、特定の動きや体の一部を繰り返し使うことが多くなります。体が発達段階にある中・高校生アスリートは、繰り返しの動作によって慢性的な障害が発生するリスクが高まります。高校生においては、トレーニングの時間に比例してケガの発生率も高まることが報告されており、いろいろなスポーツを取り入れることで、体の一部にかかる負担を軽減することに繋がります。

3. 運動のコツを掴むヒントがある

例えばボールを「投げる」動きとテニスのサーブの動きはよく似ているように、数多くのスポーツの中には、動きや体の使い方が似ているものがあります。動きが共通しているスポーツに取り組むことで、「この動きは自分の競技に似ている部分があるな」、「この動きを取り入れてみよう」と考えの幅が広がるとともに、動きの共通点を見つけ出すことで運動のコツが掴みやすくなります。


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