試合や練習前のウォーミングアップは、最適なパフォーマンスを発揮するために欠かせない重要な時間です。しかし、そのやり方を見てみると、練習初めの儀式的な肩慣らし程度にただ身体を動かすだけになっていたり、試合や練習の強度に合っていないウォーミングアップを行っているチームもあるようです。毎日のウォーミングアップの時間を見直すことは、パフォーマンスを向上させるために第一に取り組むべき課題です。
ウォーミングアップの本来の目的は、試合や練習に向けた「準備」です。ウォーミングアップという言葉が示す通り、身体を温めることも重要ですが、それだけではなく、最適なパフォーマンスを発揮するための動ける身体に「準備」しなければなりません。そこで、「ウォーム=温める」という言葉では、その本来の目的を表現することができないということから、近年では準備を強調した「プリパレーション」という言葉が用いられるようになりました。

目次
何のための時間なの? プリパレーションタイムの5つの目的
今すぐ改善!NG習慣
効果的なプリパレーションタイムを行うためのヒント
プリパレーションタイム改革実践中!

何のための時間なの? プリパレーションタイムの5つの目的

皆さんが普段行っているプリパレーションタイムはこれらの目的をどれだけ達成できているでしょうか? 試合や練習前の大切な時間を何となく過ごしていては意味がありません。
何のための時間なのか? 目的を理解して行うだけで、その役割は大きく変わります!


今すぐ改善!NG習慣

パフォーマンス向上の効果が認められなかったウォーミングアップの特徴を見てみましょう。
投げる動作が多い種目なのに、ジャンプなどの下半身の動きばかり行っていたり、時間の大半をスタティックストレッチだけに費やしていたり、あなたのウォーミングアップがこれらに当てはまっていれば、今すぐ改善しましょう。

(参考文献)
Effects of Warming-up on Physical Performance: A Systematic Review With Meta-analysis Fradkin, Andrea J1; Zazryn, Tsharni R2; Smoliga, James M3

そのお悩み解決します!

重要だとは分かっていても毎日行うからこそ、正しい知識や工夫も必要なプリパレーションタイム。効果的に行うためのポイントを押さえておきましょう!

プリパレーションタイムにジョギングを取り入れていますが、単調でつまらなく身体が温まっている気がしません。

ステップワークで変化をつけよう
ただ何となく走るだけではなく、スキップやサイドステップ、キャリオカなどのステップワークを取り入れてみてはいかがでしょうか。
ふくらはぎは第2の心臓と呼ばれており、下半身の血液を心臓に戻すポンプの役割をしています。スキップなどの様々なステップワークでふくらはぎに刺激を入れることで、血行改善や神経系の働きを良くすることにつながります。

サイドステップ&両肩回し

スキップ&両肩上下


プリパレーションタイムで
スタティックストレッチはやらないほうがいいの?

役割を理解して必要に応じて
よく、ジョギングを行った後にみんなで輪になってスタティックストレッチを行っている光景を目にしますが、スタティックストレッチは筋肉の伸張性向上に効果があっても、筋温や心拍数の上昇は伴いません。プリパレーションタイムにおいては、スタティックストレッチはダイナミックフレキシビリティの補助的なパートとして位置付け、極端に身体が硬い場合や身体が温まっている状態でさらに伸張性を高めたい時など、必要に応じて取り入れていくことをオススメします。

開脚&つま先タッチ
前後開脚

球技スポーツに役立つ
ダイナミックフレキシビリティドリルはありますか?

「股関節」の動きがポイント
急激な方向転換や様々な方向への素早い動き出しが求められる球技スポーツでは、股関節を柔軟かつダイナミックに動かすドリルを取り入れてみましょう。
また、プリパレーションタイムの後半には、ダッシュや方向転換など、実際のスポーツの動きを想定したドリルを取り入れることも効果的です。

バックハードラーウォーク

[動画がご覧いただけます]
ラテラルツイストステップ

[動画がご覧いただけます]

プリパレーションタイム改革実践中!

「試合中の選手の動きに変化が」

杉並区立松ノ木中学校
サッカー部顧問 関戸良則 先生
取材時期:2018年3月

サッカー部のプリパレーションタイムでは、足首や股関節、体幹を中心に様々なダイナミックフレキシビリティのメニューを行っています。身体を大きく動かすことやリズミカルな運動を取り入れることで、試合中の選手の動きが良くなっているように感じます。
最近は外遊びの経験が少ない子ども達も多いので、プリパレーションタイムの中で様々な動きを経験できるように取り組んでいます。


vol132 ディスパッチ
トレーニング掲載ページ