トップアスリートはどのように育ってきたのか…… 食生活を中心に体や心の変化、競技についてもとことん語ってもらいました。

食事が好きではなかった少年時代

身長は普通でしたが、食が細かったので体重は軽く、あまり体格はよくありませんでしたね。ご飯はお茶碗に一膳食べるのも難しく、家族や先生からはいつもしっかり食べるように言われていました。食事の時間はあまり好きではありませんでしたね。さらに僕は牛乳を飲むとよくお腹が痛くなっていたので、飲むタイミングを変えたり、飲み方を工夫していました。給食のように、ご飯が中心の和食には合わないなぁとも思っていたのですが…

陸上競技、そして400mとの出会い

中学校に入学してバスケを始めましたが、なかなか試合に出られませんでした。中学2年生のときに、体力テストの1500mで好タイムを出し、顧問の先生に誘われて陸上競技部に入部しました。しかし県大会ではなかなか勝てず、先生の勧めで800mに転向し、中学3年生のときに全国大会に出ることができました。高校でも800mを続けていましたが、4×400mリレーのメンバー要員として、400mにも挑戦することになりました。

社会人になって感じる食事の難しさ

社会人になって一人暮らしを始めました。基本的に自炊して主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品は揃えるように心がけていますが、副菜を揃えるのが難しいですね。夕食のときに、ご飯はまとめて炊いて冷凍保存し、肉野菜炒めを多めに作って翌日のお弁当にも入れます。実家で暮らしていたときより、焼き魚や煮物を食べる機会は減ってしまいました。入社したての頃は朝食を菓子パンとコーヒーで簡単に済ませていたこともありました…

副菜を手軽に取り入れるには
①主菜に上手く組み合わせよう
スーパーの野菜売り場には、カット済みの野菜が売られています。肉や魚と一緒に調理すると、副菜の役割を補うことができます。
(例)肉野菜炒め、魚の野菜蒸しなど

②汁物に野菜をたっぷり入れよう
冷蔵庫の残り野菜を汁物に入れてしまいましょう。野菜を煮込むとかさが減り、たくさん食べられます。(例)豚汁など

③一人前のお惣菜パックを活用しよう
スーパーやコンビニの総菜売り場には、一人前のお惣菜パックが売られています。一皿添えるとバランスがグッと良くなります。
(例)ひじき煮、切り干し大根の煮物、きんぴらごぼうなど

ケガをして食事の意識に変化が

社会人1年目の夏に膝やアキレス腱のケガをしたのをきっかけに、食生活を見直すようになりました。菓子パンが高糖質高脂質だということを知り、まずは朝食をサンドイッチに変えてみました。今はおにぎりを選ぶようにしています。おやつが食べたくなっても、菓子パンや洋菓子ではなく、和菓子やあんパンを選ぶようにしています。

栄養成分表示を確認して選びましょう
一般的に菓子パンよりサンドイッチ、おにぎりが良いと思われているようですが、あんパンは意外と低カロリー、タマゴサンドが高カロリーなことも。カロリーは含まれる脂質量によって大きく変わるので、栄養成分表示を確認し、なるべく低脂肪のものを選ぶとよいでしょう。

洋菓子と和菓子の違いは脂質
洋菓子は砂糖の他、バターや生クリームなどの油脂も多く使われています。和菓子には砂糖が多く使われますが、洋菓子ほど油脂は使われていません。甘いものが食べたくなったら、なるべく和菓子を選ぶといいですね。ただし、砂糖の取り過ぎには要注意!

社会人になって、追い込んだ練習の後は、なかなか疲れが取れにくくなったように感じます。ケガを経験したこともあって、これからは練習の質を重視し、食事も質を上げていこうと思います。特に疲労回復を強く求めるようになりました。

疲労回復にはビタミンB1
運動後の糖質補給は欠かせませんが、その糖質がエネルギーに変わるのを影で支えているのがビタミンB1です。ビタミンB1は豚肉やうなぎ、豆や雑穀などに多く含まれています。体内に蓄えられないので、毎日コツコツ玄米や雑穀米を食べておくと不足しにくくなりますよ。練習で特に疲れた日は、豚の生姜焼き丼やうな重などを食べると、疲れが一気に吹き飛びそうですね。

中島選手の一日
schedule

若きアスリートへ向けてメッセージ

練習会などでサプリメントを使っているジュニア選手を見かけるようになり、意識の高さを感じますが、「ただ速くなるためだけの食事」になっているのではないかと心配しています。ジュニア選手にはあまり結果にこだわりすぎず、陸上が楽しい、好きだという気持ちを大切に、長く競技を続けてほしいと思います。必要な栄養素を摂ることは言うまでもなく大切ですが、練習で疲れた心や体を癒すために、家族団らんを楽しみ、心の栄養も養うことを忘れないでほしいですね。

サプリメントとは「補う」もの
食事で足りない栄養を補うのがサプリメントの役割です。持ち運びしやすく、一度に多量の栄養を摂取できるので、ある栄養が足りないときには重宝しますが、摂りすぎると害になるものもあります。そのサプリメントにはどんな栄養がどれくらい含まれているのか、自分には何がどれだけ必要なのか、きちんと理解したうえで正しく活用しましょう。

勝てる体作りに苦労してきた中島選手だからこそ、食事の大切さに気付けたのではないかと思います。今回のインタビューで、さらに栄養について知ってもらえたようなので、楽しみながら勝てる体作りに食事を役立ててほしいです。中島選手の今後の活躍にご期待ください。


nakajima中島 雅達(Cramer TC)
1990年生まれ 24歳 埼玉県本庄市(旧児玉町)出身
身長177cm体重66kg 2013年日本選手権400m第8位
400mの自己ベストは46″72

児玉中学校で陸上競技に出会い、埼玉県立松山高校、大東文化大学では800m、400mの選手として活躍した。現在は株式会社クレーマージャパンに勤務し、トラッククラブの400m選手として活動している。