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■これだけは知っておきたい−ファーストエイドとリハビリテーション

スポーツにはケガがつきものです。1点、1秒、1センチを争う中では、どうしても大きな負荷を身体にかけることになります。また、例え予防をしていても、不可抗力でケガをしてしまうこともあります。そのため、十分な予防を行なうことは大前提ですが、ケガをすること自体はスポーツではある程度やむを得ないと考えられます。
そこで重要なのは、ケガをした時の処置です。ケガに正しい処置を行なうか否かは、その後のスポーツ人生を左右しかねない重要なポイントになります。スポーツ科学、医学の情報が豊富になった現在でさえ、中学、高校などでは施設、人材の両面でケガヘの対応が整備されていないケースが数多く見られます。ここに紹介するスポーツ障害への対応は、最低限、覚えておくべきでしょう。


■何はともあれP.R.I.C.E.S

ネンザでも肉離れでも打撲でも、ケガが起きたらすぐにPRICESを実施する必要があります。PRICESとは、応急処置に必要な事項を英語表記し、その頭文字を取ったものです。これは別名、ファーストエイドと呼ばれています。それぞれの内容は次に解説する通りです。

P:Protection 保護
ケガをしてしまった部位を保護し、それ以上、不必要なダメージを与えないようにします。ファーストエイドは、まず選手を安全な場所に移動させることからはじまるのです。状況に応じて副木を当てるなどの処置も、保護の一つです。

R:Rest 安静
患部を動かさないようにします。患部を安静にしておくことで、腫れや炎症を抑え、出血を最小限に食い止めておくことができます。安静をおろそかにし、患部を早く動かしすぎると、回復が遅れるばかりでなく、関節の動きなどの機能障害も悪化させてしまいます。受傷後2〜3日、患部を固定して安静にしておけば、当面の治癒は進みます。

I:Ice 冷却
応急処置で最も重要なものです。患部を冷やすことで一時的に新陳代謝を低下させ、毛細血管を収縮させて血液の流れを抑制し、傷ついた患部に血液が溢れることを食い止めます。また、冷やすことである程度は痛みを和らげることができます。冷やす方法は、現実的な方法として次の2つが考えられます。
  • アイスパック
  • 冷水浸し
    バスタブや大きめのバケツなどに氷で冷やした10〜13度の冷水を入れ、患部をそこに浸からせて冷やす。冷やす時間は1回10分程度が目安。10分未満でも、冷たさで感覚がなくなれば休止する。回数などはアイスパックと同じ。
C:Compression 圧迫
患部を包帯、ラップなどで圧迫することで、内出血を抑え、患部に血腫(血のかたまり)ができることを防ぎます。圧迫には多くの場合、弾力性のある包帯が活用されますが、その包帯を水に浸けてから冷凍室で冷やしておけば、冷却と圧迫が同時にできます。圧迫は、基本的には4時間圧迫し、15分外すというリズムで行ないます。次のようなケースでは、圧迫を緩めるか外してください。
  • 圧迫している部位の先が血行不良で変色してきた時。
  • 圧迫している部分の先がしびれてきた時。
  • 圧迫後、痛みが増してきた時。
  • 寝る時。
E:Elevation 高挙
高挙とは、患部を心臓より高い位置に持ち上げることです。患部が心臓より高くなることで、患部に流入する血液の量 が制限でき、内出血を軽減させることができます。

S:Support 補助
患部の悪化を防ぎ、より良い状態で回復に向かうよう、さまざまな補助を工夫します。腕を吊る、松葉杖をつくなどが一般的ですが、ケガの箇所、程度に応じて臨機応変に対処してください。


■冷やすから温めるへ、リハビリの開始

(1)ドクターの診断を必ず受ける
PRICESのファーストエイドは、復帰のためのリハビリテーションの第一歩といえます。ファーストエイドが適切に行なわれれば、大抵のケガは72時間程度で症状が落ち着きます。もちろん、その間、ドクターに診断を仰ぐことは重要です。素人診断だけで済ませてはいけません。レントゲン等を使って、専門的な検査をしてもらう必要があります。
ドクターの診断を受けずに直接、東洋医学などの治療家のもとに駆け込むケースがあります。これらの民間治療は、初期の治療には向いていません。加えて、骨、靱帯などに関する医学的診断を下してもらうことができません。受傷直後の診断は、まずドクターにしてもらうことです。もちろん、この後から説明するリハビリトレーニングの段階では、血行促進などの点から、東洋医学の療法は効果を発揮します。
ファーストエイドが適切に行なわれていれば、一般に受傷後、3〜4日でリハビリテーションの第一歩をはじめられます。よく、ケガをしても2〜3日放っておきその後、痛みが増してからドクターのもとを訪れるというケースがありますが、これでは回悔も大幅に遅れてしまいます。とにかくファーストエイドだけは受傷直後に必ず実施してください。

(2)いつから温めるか
ファーストエイドの段階ではとにかく患部を冷やし、内出血、炎症を抑えることが重要です。患部の炎症が納まったら、今度は回復のためのリハビリテーションが必要です。リハビリ、つまり機能回榎に必要なものは、筋肉や靱帯、骨などの修復に必要な酸素と栄養素です。これらは血液によって運ばれていきます。
つまり、今度は血行を促し、患部に新鮮な血液が十分に行き渡るための努力を施さねばなりません。血行促進です。その最も手軽かつ効果的な手段が、患部を温めることです。いつまでも冷やしていては血行が滞り、回復が遅れますから、ある時点から温めることに切り替えなければなりません。
リハビリでは柔軟性、可動域の回復は重要な課題
しかし、いつから温めればいいのか。これは微妙な問題です。患部が落ち着いたと思っても、実際にはまだ内出血が納まっていなければ、温める行為は逆効果になってしまいます。
その判断は「痛み」でします。痛みは基本的には障害の程度の進行と正比例して増減すると考えてください。ですから、痛みが増しているときは、症状が悪化しているのです。そして痛みはある時点でピークを迎えた後、下降していきます。この時が、患部も回復に向かっている時と判断するのです。
痛みが引いてきたことが実感できたら、患部を温め、血行を促してください。大抵、受傷後3〜4日がその時期になります。


■オーバーヒートに注意しながら進む

患部を温められるようになると同時に、リハビリのトレーニングも開始します。リハビリトレーニングをどのように進めていけばいいかという点について、兵庫大学助教授の魚住廣信先生は、柔軟性、関節の可動域(ROM)を取り戻し、筋力を回復させることが課題になります。
以下、図に示されているように順次、段階を踏んでケガの前の状態に戻していきます。具体的なトレーニング方法については、トレーナーに相談したり、クレーマーに問い合わせてください。
ただし、リハビリトレーニングの初期には、受傷から回復間もない患部を温めて動かすため、患部が一時的に炎症状態を起こすことがしばしばあります。そのため初期には、リハビリトレーニングを終了した後、患部をアイシングして鎮静させることが必要です。これを怠ると、再び痛みや腫れが出てくることがありますので、十分注意してください。