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■腰痛:腰仙・仙腸関節捻挫

Published in The First Aider.Volume 64, Number 1, Cramer Products, Inc.
訳 八田倫子, ATC

■腰痛とは

腰部の痛みは病理学的なサインであり、必ずしもその部位に問題があるというわけではありません。腰痛を表すにはさまざまな用語が使われますが、そのほとんどが誤解や類義語であったり、あるいは間違いであったりすることが多いものです。スポーツにおいて最もよく使われる表現には、坐骨神経痛と腰仙・仙腸関節捻挫があります。
アスリートの年齢が高くなると、腰部の傷害はより起こりやすくなります。高校生レベルでのこの傷害の発生率は比較的低いのですが、大学・プロへと上がるにつれて段々と増えてゆきます。いわゆる急性腰部傷害とは、長期にわたって打撲や急激な捻りを繰り返し悪化させてきた変性が積み重なった状態で、ほとんどの場合が姿勢異常や数多くの小さな傷害に起因しています。また、解剖学的な「弱さ」が存在するときも傷害が発生します。体幹や脊柱は仙骨を下方へ押しさげ、逆に下肢と骨盤は上方へ押し上げます。したがって、体幹がある一方向に捻られ、反対側のハムストリングスが骨盤を下方へ引っ張ったりした時に異常なひずみが生じます。柔軟性の足りない腰部や構造的に変形していたり、筋力の弱い腰部にこのようなストレス(力)が加わると、障害の原因となります。

■坐骨神経痛

坐骨神経痛とは坐骨神経が炎症を起こしている状態をいいます。大腿部後方と内側の神経経路に痛みを伴います。坐骨神経痛という用語は、一般的に腰痛すべてを意味するなど、はっきりした原因を追求されずに間違って使用されることもあります。坐骨神経は腰仙骨神経叢を起始とし、各神経枝を下肢の筋肉へと連絡します。最も大きな坐骨神経枝は第5腰神経で、脊椎をでてすぐに仙骨の開口部を通 ります。この神経は特に捻りや直接打撃に対して弱く、脊椎から出てすぐの所で異常なストレッチや圧迫がかかりやすく、外傷をひきおこします。また、坐骨神経は坐骨棘を通過する部位に傷害を受ける恐れがあります。この部位で筋スパズムや打撲が起こると、神経に直接圧迫が加わり、このとき最も影響を受けるのが腰仙関節と第5腰神経になるのです。
坐骨神経痛を患うアスリートは、局所的な痛みやうずき、動作痛、皮膚感覚麻痺やチクチク感などを神経に沿ったさまざまな部位で感じます。

■腰仙関節・仙腸関節捻挫

腰仙関節捻挫には、第5腰神経への刺激によっておこる腰部の広範囲にわたる鈍痛が伴います。そのほか、スパズム(筋痙攣)、腰仙接合部での圧痛、体幹の動作制限などの症状がでます。腰仙接合部損傷は、スポーツにおける腰部の傷害のなかで最も多いと考えられています。この捻挫は脊柱前弯症といった姿勢偏位のあるアスリートによく起こります。これは、腰部の可動域全域を必要としない種目に関わる選手が、結果的に動作制限が出るようになり、アブノーマルな捻りや打撃に耐えられなくなるという理由によるものです。腸骨と仙骨からなる接合部を仙腸関節といいますが、靭帯組織で強化されていて可動性が少ない関節です。スポーツの現場において、仙腸関節の捻挫が頻繁に起こるかどうかは疑問です。専門家の間では、仙腸関節捻挫、実際には、腰仙関節の状態にも関係あるのではないかと言われています。

Source: Reprinted from, "The Science of Sports Medicine Injury Prevention and Management", Modern Principles of Athletic Training, Carl E. Flafs and Daniel D. Arnheim. Fourth Edition

Published in The First Aider.Volume 64, Number 1, Cramer Products, Inc.