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■シリーズ:トレーナーって何?

その2
・学生トレーナーの活動内容は
・どのように実力をつけるのか
・卒業後の進路は


国際武道大学の学生トレーナー制度をケーススタディに、トレーナー活動とはどのようなものかをみていくシリーズ。今回は、学生トレーナーの実際の活動内容を紹介しながら、卒業後の進路も考えていく。

■どのように活動しているのか

前回紹介したように、国際武道大学では各クラブに必ず1名、学生トレーナーを置くことになっている。学生トレーナーは「コンディショニング論」「アスレチックリハビリテーション論」「救急処置法」「スポーツ外傷・傷害論」などの授業の他、毎月2回、定期勉強会に参加して知識、技術を深めていく。また、必要に応じて健康管理室、トレーナールームで山本利春先生の指導を受ける。

今回はもう少し詳しく活動の内容を見ていこう。国際武道大学でのトレーナー活動の特徴は、体力測定をはじめとする運動機能の評価に基づいた的確なコンディショニングということができる。つまり、選手個人の身体の特徴を常にしっかりと把握し、その機能評価の結果を基準に日常のトレーニングの強度を決めたり、ケガをした後のリハビリの進め方を決めたりする。

体力測定というと、これまでは一般に握力、背筋力など、文部省式の測定が中心になっていた。国際武道大学では、当初からスポーツに必要な要素をとらえて独自の測定項目をつくり、活用している。大腿部の筋肉が、自分の体重に対して何%くらいの力が発揮できるかを示すWBIという数値の活用もその一つだ。

選手のWBIがどのレベルにあるかで、十分な競技力が発揮できるかどうかの目安がつくれ、またケガからの回復がどの程度進んでいるかという点にも目安がつくれる。選手は自分の体力に見合った目標に応じてトレーニングを進めることができる。


■学生が運営・データ管理、プロの測定も

国際武道大学には毎年約500名の新入生が入学してくるが、彼らの体力及び運動機能の測定を実施し、そのデータ管理を行なうのも学生トレーナーである。また、各クラブがシーズンオフの前後に行なうコンディションチェック、トレーニング効果 の判定なども、学生トレーナーの手で行なわれる。

こうしたことを通じて、学生トレーナーは傷害予防との関連で見た体力とトレーニング、リハビリテーションを学び、知識と実践力を深めていくが、もう一つとても重要なことがある。それは、測定したデータを迅速に処理し、選手に理解しやすい言葉、形でフイードバックすることである。

そのために、学生トレーナーはまず各競技を深く理解しておく必要がある。測定・アドバイスする選手のスポーツがどういう動きの特徴を持ち、どういうケガが起きやすいのかを熟知し、測定データをもとに選手にトレーニング内容を納得させる力がトレーナーには必要だ。

こうした活動で実力をつけるうち、国際武道大学の学生トレーナーは、現在ではプロサッカーJリーグ・ジェフ市原の測定・アドバイスのスタッフとしても活動できるレベルに実力を上げている。測定・アドバイスは年4回、行なわれているが、その実績を認められ卒業生から同チームにトレーナーとして就職する人材も生まれた。


■スポーツトレーナーだけが道ではない

ただし、現実には卒業生がトップスポーツのトレーナーとして職を得るケースは少ない。フィットネスクラブの指導者という道も、以前に比べて少なくなっている。しかし一方で、スポーツ科学に通じ、運動指導ができる人材を望んでいる機関もある。

それは、例えば保健所であり、リハビリを実施する病院である。これまで保健婦、理学療法士がこなしていた領域に、高齢化社会、健康増進活動の活発化、専門分野の細分化などから広がりが生まれ、よりトレーナー的活動が望まれるようになっているのである。また、学校の養護教諭からトレーナー的知識・技術の取得を望まれるケースも出ている。

スポーツトレーナーと限定すれば、学生トレーナー出身者の卒業後の道は険しい。しかし、視点を変えて、地域や社会の健康づくりという意味では、むしろ需要は増えてきている。形はどうあれ、人々の体力増進、健康椎持に科学的専門知識と技術を活かすという意味では、新たな活躍場所も拓けている。いずれの形で社会に出ていくにせよ、トレーナー活動で養われる奉仕、思いやりの精神は、その人物の信頼度を高める材料になる。山本先生は、トレーナーの資質で最も重要なものは「人柄」であるとしている。人の体を扱う仕事として、心から信頼される人柄でなければ、どんなに優れた知識と技術を持っていてもトレーナーとして相談を受けることがないからだ。