スポーツをする上で重要な部位だとわかっていても、明確に動きを意識しにくいのが「股関節」ではないでしょうか。股関節を力強くそして効率よく動かすことで、大きな下肢のパワーが発揮されます。今回は股関節について理解を深めましょう。

股関節の役割と特徴

股関節は、骨盤の左右に位置して胴体と両脚を繋いでおり、体重を支える重要な役割を担ってる関節です。膝関節や足関節なども体重を支えてはいますが、その役割が最も大きいのが、この股関節であると言えるでしょう。
さらに股関節は、体重を支えながら、身体を大きく屈曲させたり、脚を前後・左右に広げたり、外側や内側に回すなど、さまざまな動作が可能な関節となっています。

1.最大の関節

股関節は人間の体の中で最も大きい関節構造となっています。単純に大きさのことだけではなく、周辺の靭帯や筋肉などの軟部組織と共に協調しあって働くという特性を持っています。

2.三軸構造

膝関節は蝶番関節という、ドアの蝶番のような動きをする二軸構造です(他動的にわずかに三次元的な運動もします)。一方、股関節は球関節という三軸構造になっています。三軸構造である関節は他に肩関節(肩甲上腕関節)もありますが、関節としては股関節の方が複雑な構造となっています。

3.支持性と三軸可動性

股関節は、三次元の運動である三軸運動を発揮しつつも、人体の体重を支えるという大変優れた機能を持っています。このことは、あらゆる角度からの負荷に耐えられることを意味しており、一定方向からの負荷に脆弱な二軸構造と比べると、その強度には大きな差があります。

4.最も「意識しにくい」関節

一般的に意識しやすい部位というのは、視覚・触覚で捉えられるところです。股関節は周囲を分厚い組織に囲まれ、身体の深部に位置しているため、直接見ることも触れることも難しいため、人体の中では非常に意識しにくい部位となっています。最も強力で重要な関節の1つであるにも関わらず、最も意識しにくい(=繊細に感じにくい・動かしにくい)のが股関節なのです。

股関節の構造

股関節付近の骨盤には、おわん型のへこみ(寛骨臼窩かんこつきゅうか)があり、大腿骨のピンポン玉状の先端部(大腿骨頭)が収まるような形で繋がっています。どちらの表面も軟骨組織で覆われ、スムーズに「歩く」「走る」「座る」「あぐらをかく」といった動作を可能にしています。
股関節には、普通に歩くだけでも体重の3〜4倍の力がかかると言われています。この力を支えられるよう、股関節には、大腿骨頭を寛骨臼窩へ繋ぎ止めておく靭帯や筋肉が数多く付着しています。多くの筋肉や腱などで全体を覆われているため、安定性を保ったままその方向へ動かすことができるのです。

しかし、肩関節に比べ可動範囲が狭いという特徴もあります。肩関節はぐるぐると回すことができますが、股関節を同じように回すことはできません。工夫した運動を通じて、股関節の可動範囲を広げることが、運動能力の向上にも繋がっていきます。

股関節の機能

股関節の基本的な動きは、屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋の動作ですが、単一方向で動くことはほとんどなく、2つ以上の運動が複合されて動いています。例えば、身体方向に対して横にハードルを越える動作(右脚が前の場合)は、屈曲と外転が組み合わされた複合運動となります。股関節の機能を高めるには、単一の可動域だけで強化するのではなく、プラスして複合運動の筋力と可動域が必要です。
競技特性(器械体操、新体操、フィギュアスケート)においては、基本の関節可動域を超えた柔軟性が必要ですが、スポーツ選手は最低でも基準の可動域を保持しておく必要があります。

股関節の周囲には、多くの腱が集まっており、さらに大腿動脈という下半身へ血液を送る太い動脈、多くのリンパ節、そして太い神経が通っています。股関節周辺が固まってしまうと、血管やリンパを圧迫し流れが悪くなってしまうため、疼痛や冷え性、痺れなどが起こる可能性があります。また、本来自由に動くべき股関節の動きが制限されてしまうと、膝痛や腰痛を引き起こすこともあります。
このようにならないためには、股関節の柔軟性を高めて、流れの良い大きな動きができるようにすることが重要です。屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋の動きでストレッチを行いましょう。
また、股関節の筋力を向上させることも必要です。股関節の動きを高めるダイナミックフレキシビリティを取り入れ、股関節を力強く効率よく動かせるよう意識して行いましょう。